2015秋の密教伝授
ポタラ・カレッジ 2015年秋の密教伝授 (2015年10月13日最終更新)
お陰様で、全ての行事は無事に成満しました。ありがとうございます。
チベット仏教ゲルク派大本山デプン寺ロセルリン学堂の前僧院長トクデン・リンポチェ猊下をお招きし、10月1日から12日にかけて、密教の灌頂などを授けていただきました。トクデン・リンポチェ猊下は、2003年から2008年まで、ゲルク派密教の最高学府ギュトゥー寺の副僧院長と僧院長を歴任し、チベット密教の教相と事相に深く精通した大阿闍梨です。
今回は、ゲルク派密教の無上瑜伽三大本尊のうち母タントラの上首と位置づけられる「チャクラサンヴァラ」ルーイーパ流の大灌頂、チャクラサンヴァラの明妃を一尊で修習する「ヴァジュラヨーギニー」の加持灌頂と成就法伝授をはじめ、宗祖ツォンカパ大師、七仏薬師、白マハーカーラの許可灌頂、ラムリムの要点を読誦用にまとめた「ユンテン・シルキュルマ」の法話などを実施しました。
1.前行御法話「ユンテン・シルキュルマ」 【一般向けの内容です】
10月1日(木)午後6時~9時
密教の灌頂や伝授を受けて修行するためには、その基盤として顕密共通の道を修練しなければなりません。つまり、仏教一般と大乗仏教をよく学び、正しく理解し、そのうえで堅固な信心と殊勝な動機を確立することが必要不可欠です。そのため、一連の密教伝授の冒頭に、大阿闍梨御自身から「前行御法話」を授けていただくのが通例となっています。前行法話の題材として最もふさわしいのは、「ラムリム」に関する教えです。
今回の「前行御法話」では、宗祖ツォンカパ大師御自身が「ラムリム」の要点を読誦用に凝縮してまとめた「ユンテン・シルキュルマ」をテーマに、顕密共通の道の教えを授けていただきました。
2.チャクラサンヴァラ・ルーイーパ流の大灌頂 【ポタラ・カレッジ会員限定】
10月3日(土)午後2時~6時、4日(日)午後2時~7時30分
密教の最奥義たる無上瑜伽タントラの中でも母タントラを代表する「チャクラサンヴァラ(最勝楽)」ルーイーパ流の、四灌頂を具足した完全な大灌頂です。宗祖ツォンカパ大師は、一切タントラの王である「秘密集会(グヒヤサマージャ)」に加えて、「チャクラサンヴァラ」を併修することの意義を強調なさっています。それには明確な理由があり、簡単に言えば、「秘密集会」が幻身を立ち上げる最も効果的な行法を説いているのに対し、「チャクラサンヴァラ」は光明の現前に効果的な秘訣を提示しているからです。顕教よりも密教が優れている点は、仏陀の法身と色身を速やかに得られることです。そして光明と幻身は、まさに法身と色身を得る手段の中でも、究極のものと位置づけられます。
「チャクラサンヴァラ」の諸流儀の中でも、ルーイーパ流は最も代表的なものであり、ゲルク派密教の最高学府として名高いギュメー寺やギュトゥー寺で正式なカリキュラムとなっているのも、この流儀に基づく行法です。
今回「チャクラサンヴァラ」の大灌頂の受法した方は、大乗仏教の教えを正しく学ぶという心がげを堅持し、密教に対する信心を深め、大阿闍梨と三宝を恭敬して帰依することが肝要です。そして、「菩薩戒」と「三昧耶戒」を守り、「六座グルヨーガ」を毎日昼夜に修行することが、大阿闍梨との誓約となっています。
3.ジェ・ツォンカパ大師の許可灌頂 【比較的一般向の内容です】
10月6日(火)午後6時~9時
宗祖ツォンカパ大師を本尊とし、それと結縁する許可灌頂です。ツォンカパ大師は、一般論として、文殊の化身だと信じられています。また、仏陀の慈悲を体現する観自在、智慧を体現する文殊、威力を体現する金剛手の三尊を一身に集約しているとも考えられています。
今回は、文殊・観自在・金剛手の三部を合わせて成就する「三部共成就」という流れの、無上瑜伽タントラに基づく許可灌頂です。この「三部共成就ジェ・ツォンカパ大師の許可灌頂」を授けることのできる阿闍梨は意外と少ないので、今回は、宗祖大師と仏縁を結んで三部の加持力をいただく絶好の機会となりました。
4.白マハーカーラ如意宝珠の許可灌頂 【一般向の内容です】
10月7日(水)午後6時~9時
観自在菩薩の化身といわれる護法尊マハーカーラ(大黒)にも様々な行相がありますが、この白マハーカーラは、財神として霊験あらたかなことでよく知られています。今回の許可灌頂は、白マハーカーラとの仏縁を結び、財運向上や事業繁栄、商売繁盛などの諸願成就を祈念するものです。
こうした現世利益は、それだけを願うのではなく、例えば「それによって布施波羅蜜の修行ができるように」というふうに、大乗仏教の修行と結びつけて祈ることが肝要です。
5.ヴァジュラヨーギニー(金剛瑜伽女)の加持灌頂 【ポタラ・カレッジ会員限定】
10月10日(土)午後2時~8時
チャクラサンヴァラの明妃であるヴァジュラヴァーラーヒー(金剛亥母)を単独で本尊とする加持灌頂です。チャクラサンヴァラ-中でもルーイーパ流-は、曼荼羅の諸尊の数が多く、成就法の行法も複雑なため、日常的に実修するにはある程度困難を伴います。それに対し、ヴァジュラヨーギニーは一尊だけの行法だから、比較的簡潔な流れで修行できます。そのため、チャクラサンヴァラの代替として実修するのに適しています。
この許可灌頂を受けるには、前もって無上瑜伽タントラの大灌頂を受法していなければなりません。その中でも、チャクラサンヴァラの大灌頂なら、最も理想的です。
6.ヴァジュラヨーギニー(金剛瑜伽女)の成就法伝授 【ポタラ・カレッジ会員限定】
10月11日(日)午後1時~6時
ヴァジュラヨーギニー加持灌頂の受者を対象に、成就法の広本儀軌を伝授していただきました。自分でヴァジュラヨーギニーの行法を実践するためには、内容に熟練したラマから成就法の伝授を受け、その教えや導きに従って少しづつ理解と体験を深めてゆくことが肝要です。トクデン・リンポチェ猊下は、無上瑜伽タントラの理論を隅々まで知り尽くし、深い実践体験を持つラマです。それゆえ、たとえ短期間の伝授でも、要点を突いた中身の濃い教導になったと思います。
なお、この成就法伝授では、略作法でも構いませんが、ヴァジュラヨーギニーの我生起の実修が三昧耶となっています。
7.七仏薬師の許可灌頂 【一般向の内容です】
10月12日(月・祝)午後1時30分~5時30分〕
身心の病を癒やしてくださる薬師如来と仏縁を結び、当病平癒や身体健全などの諸願成就を祈念する許可灌頂です。こうした現世利益は、それだけを願うのではなく、「健やかな身心を得て、大乗仏教の修行ができるように」というふうに祈ることが肝要です。
この「七仏薬師の許可灌頂」は、今回の一連の灌頂等の中で、最も一般向けの内容です。まじめな信心さえあれば、予備知識や経験の有無を問わずどなたでも受法できます。
[ 大阿闍梨トクデン・リンポチェ猊下の略歴 ]
1944年、チベット東部のカム地方に生まれる。幼少時に転生活仏として認定 され、仏教の基礎を学修。1952年、聖都ラサへ赴き、ゲルク派大本山デプン寺ロセルリン学堂に入門。先代リン・リンポチェ猊下(ダライ・ラマ法王の師僧)やデンマ・ロチュー・リンポチェ猊下(ポタラ・カレッジ宗教・学術顧問)など、優れたラマたちから顕密の教えを受ける。1959年、ダライ・ラマ法王の後を追ってインドへ亡命。南インドに再建されたデプン寺ロセルリン学堂などで学修を継続し、1981年にゲシェー位を取得。ダライ・ラマ法王の意向を受け、ラダックやスピティなど、インド北部のヒマラヤ地方で教化活動に従事。北インドのダラムサラ山麓に再建された密教の最高学府ギュトゥー寺で、2003年から副僧院長と僧院長を歴任。2008年、デプン寺ロセルリン学堂の僧院長として晋山し、2013年まで務める。2011年7月、ポタラ・カレッジの招聘で来日し、東京センターで「秘密集会(グヒヤサマージャ)」聖者流の大灌頂などを授ける(こちらを参照)。
【お知らせ】 無上瑜伽タントラ灌頂受者限定のページ(パスワード認証)で、「六座グルヨーガ」について、実修上の参考となる記事を掲載してあります。入口は、こちら。
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