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2012秋の密教伝授

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ポタラ・カレッジ 2012年秋の密教伝授
お陰様で、全ての行事は無事に成満しました。ありがとうございます。

大阿闍梨チャト・リンポチェ;御本人よりチベット暦正月の御挨拶として拝領したお写真です。


ダライ・ラマ法王直属の本山ナムギェル寺で僧院長を務められた高僧チャト・リンポチェ師(現ギュトゥー寺僧院長)をお招きし、10月3日から14日にかけて、密教の伝授を授けていただきました。

一般向行事については、ポタラ・カレッジ公式サイトにも掲載されていますので、御参照くださいこちらをクリックすると、別ウィンドウで開きます)。

このページは、一連の伝授の記録として、保存しておきます。

9月29日(土)
大阿闍梨チャト・リンポチェ師、執事ゲシェー・トゥブテン・タシー師、承仕ゴンポ師、ウランバートルより成田空港へ御到着されました。


9月30日(日)
会員の皆様の御奉仕により、会場となるポタラ・カレッジ東京センターを浄化・荘厳しました。ありがとうございます。


10月1日(月)
東京センターにて、大阿闍梨チャト・リンポチェ師、ゲシェー・トゥブテン・タシー師と打ち合わせを行ないました。
「ヤマーンタカ一尊大灌頂」の三昧耶のうち、「六座グルヨーガ」に関しては、どうしても時間のないときは略次第儀軌で修行してもよいことになりました(あくまで、今回の大灌頂の三昧耶についてのことです)。


10月3日(水)
大阿闍梨チャト・リンポチェ師の密教伝授、いよいよ始まりました!
初日は「前行御法話」。
仏教の他教とは異なる特長について、とても分かりやすく説いてくださいました。

前行御法話


10月4日(木)
二日めは「金剛薩埵父母尊の許可灌頂」。前半の総論的な御説法では、密教一般と、中でも無上瑜伽タントラの特長について、高度な内容を分かりやすく説き明かしてくださいました。この日は、真言宗僧侶の方々も大勢受法されていました。

金剛薩埵父母尊


10月5日(金)
明日から三日間、「ヤマーンタカ一尊」の大灌頂と成就法伝授です。これを受法するにあたって最も大切なことを、直前に再認識する必要があるので、本日付のブログに書いておきました。


10月7日(日)
「ヤマーンタカ一尊」大灌頂、お蔭様で、無事に成満しました。まずは、ひと安心です。

大灌頂の法儀を全て終えて


10月8日(月・祝)
三日間にわたる「ヤマーンタカ一尊」の大灌頂と成就法伝授、すべて無事に円満成就しました。
ラマの御恩に感謝を捧げるとともに、受者の皆様の御精進に随喜したいと思います。

hum字の収斂次第

写真は、タブレット端末を使ってhum字の収斂次第をお説きになる御様子。

 
10月9日(火)
本日リンポチェたちは、日光へお参りに行かれています。


10月10日(水)
ナーガールジュナ『出世間賛』の講伝。中観哲学の奥深い教えを、簡潔に解説していただきました。
『出世間賛』は、「聖者の行境たる勝義を説示した」という面から釈尊を礼賛する偈頌です。
具体的には、『根本中論頌』の様々な内容を示してから、「そのように貴方様(釈尊)はお説きになった」という形で、お釈迦様の説法の素晴らしさを賛嘆しています。つまり、『根本中論頌』の中身が、もともとは仏陀の教えに由来するという点を、この『出世間賛』は明らかにしているのです。
例えば、『出世間賛』の第二十偈は、「縁起として生じるところのもの、まさにそれを御身(釈尊)は空だとお説きになった。事物は自在に存在するわけではないという、これこそ無比なる御身の獅子吼である」と述べています。
これに相当する仏説の教証は、『無熱龍王所問経』の「何であれ縁より生じたものは不生である。それに生の自性があるわけではない。縁に依存するところのものを〔仏陀は〕空と説く。誰であれ空性を知る者は不放逸だ」という阿含です。
この阿含に基づき、ナーガールジュナは、『根本中論頌』第二十四品で「縁起として生じるところのもの、それこそが空性だと〔私は〕説こう。それは依って仮説することにほかならず、それこそが中道なのである。縁起生ならざるいかなる法も存在せず、それゆえ空ならざるいかなる法も存在しない」と述べています(第18・19偈)。
これらは、縁起と空の関係を説き示している非常に重要な教誡です。


10月11日(木)
「金剛摧破の許可灌頂」。その正行に先だって、業障などを消除する儀式が厳修されました。写真は、頭頂に瓶水を注いで浄化し、息災を祈願する修法。これは、受者全員に授けられました。

金剛摧破洗除法

こうした修法は、前もって本尊生起を成就した大阿闍梨の加持力により、仏陀の善巧方便が具体化するという形で、一時的な効果は確かにあるはずです。
けれども、「仏陀は人々の罪を水で洗い流すわけではないし、人々の苦を手で取り除くわけでもない。また、自分自身の覚りを他者へ移すわけでもない。そうではなく、真実の教えを説き示すことによって、人々に覚りを得させるのである」と釈尊がお説きになっているとおり、これのみによって私たちの煩悩障と所知障を断滅して覚りを実現することは不可能です。
それゆえ私たちは、こうした修法の効果と限界を正しく認識しなければいけません。その効果で一時的に諸障が除かれた機会を捉え、自ら仏陀の教えをよく学んで修行に精進し、覚りを目指すべきなのです。


10月12日(金)
明日と明後日の「不動明王大灌頂」は、所作タントラに基づく法儀のため、初日の朝から成満まで、肉、魚介類、卵、ニンニクや長ネギなどを口にしないように気をつけてください(乳製品は可)。
こういう食事の制約は、所作・行タントラの場合だけです。無上瑜伽タントラの灌頂でも同様だと勘違いしているケースも見受けられますが、そのようなことはありません。


10月13日(土)
「不動明王大灌頂」初日の準備行。冒頭で、ゲクトルという魔除けの修法をなさっているところです。

不動大灌頂のゲクトル


10月14日(日)
大阿闍梨チャト・リンポチェ師による密教伝授、「不動明王大灌頂」二日めの正行をもって、全ての行事が円満成就しました。これも、リンポチェの広大な御慈悲、会員ボランティアの御尽力、そして受者の皆様の熱意と御協力のお蔭です。心から感謝と随喜を捧げます。

投華得仏

写真は、「不動明王大灌頂」に於ける投華得仏。赤巾は目隠しの象徴、宮殿風の屋根は曼荼羅の楼閣です。楼閣の中の曼荼羅へチャムパカの花弁を投じ、有縁の部族の金剛名を授かります。
「不動明王大灌頂」は、「金剛薩埵許可灌頂」とともに、日本密教の僧侶の方々の御参加が目立ちました。この点も、リンポチェはとても喜んでいらっしゃいます。


10月18日(木)
チャト・リンポチェ師御一行、成田空港からデリーへご出発されました。



ヤマーンタカ一尊

ヤマーンタカ一尊

今回の大灌頂のためにチャト・リンポチェが御持参されたヤマーンタカ一尊のタンカです。


ヤマーンタカ一尊の曼荼羅

ヤマーンタカ一尊曼荼羅

これは、私がギュトゥー寺で撮影したヤマーンタカ一尊曼荼羅。ギェルヮ・ケルサン・ギャツォ(ダライ・ラマ七世法王)の自灌頂儀軌の流儀だそうです。
ちなみに、中心の円内に、「ヤマーンタカ十三尊曼荼羅」と同様の井桁を描く流儀もあります。一尊ですから、井桁中心の四角の中にだけ、三昧耶形の金剛杵を置くことになります。この井桁は、内陣の中心と四方・四維の区画を示すとともに、楼閣の八柱と四梁を表現しています。一尊の場合、前者の意味がないため、上の図のように井桁は描かれません。しかし、後者をイメージするため、井桁を描く流儀もあるわけです。


不動明王

不動明王

不動明王。ミトラ・ギャツァの古い線描。


不動明王の曼荼羅

不動明王曼荼羅

チャト・リンポチェが御持参された「ミトラ・ギャツァ」収録の不動明王曼荼羅。


仏画や曼荼羅の拡大画像こちらfacebookのアルバムが別ウィンドウで開くので、そこに表示された画像をクリックしてください)。

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