ポタラ・カレッジ齋藤保高の個人サイトです。チベット仏教の伝統教学について、質の高い情報を提供します。

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2月26日(日) 名古屋教室の担当月について

昨日は、ポタラ・カレッジの「ロサルの集い」がありました。会員・受講者の皆様どうし、交流・親睦の機会になったと思います。
会場のインド料理レストラン「ガンディーマハル」は、2001年にリゾン・リンポチェ猊下の謝恩パーティを行なったお店です。それ以降は、淡路町のルンビニや赤坂タージを使っていたので、本当に久しぶりでした。

ところで、春からの定期講習のページ、名古屋教室の実施日を入れました。4月から9月の間は、偶数月がクンチョック先生の担当、奇数月が私の担当となります。3月・4月とクンチョック先生の回が連続するので、御注意ください。

2月23日(木) 春からの定期講習

4月から始まるポタラ・カレッジ定期講習の、御案内ページを作りました。
こちらを御覧ください。
一部未定の箇所など、これから随時更新します。
この春からも、仏教の学修に精進してゆきましょう。

2月22日(水) ロサル

ラサ・チョカン寺

ནམ་ལོ་གསར་བཀྲིས་བདེ་ལེགས་ཞུ །།

本日は、チベット暦2139年元旦(ロサル)です。

新しい年にはチベット本土の状況が好転し、人々が平和な信仰生活を送れるように、心から祈りたいと思います。

ポタラ・カレッジの「ロサルの集い」は、今週土曜(25日)の夕方です(御案内はこちら)。準備の都合上、参加お申し込みは、木曜(23日)までにお願い致します。

写真は、ラサのチョカン寺。本堂の前でバター灯明を供養する巡礼者たち。

2月20日(月) グヒヤサマージャ祈願文

私の担当している定期講習「グヒヤサマージャ成就法広本講読」コースでは、成就法の本体部分を読み終え、昨日から願文に入りました。
広本のテキストにある願文は、宗祖ツォンカパ大師御自身がお造りになった「グヒヤサマージャ祈願文གསང་འདུས་སྨོན་ལམ་」というものてす。顕密共通の道、四灌頂、三昧耶と律儀の保持、生起次第、究竟次第の要点が網羅されていて、とても素晴らしい内容です。「ユンテン・シルキュルマ」の密教版と言えるかもしれません。
この願文を通じて、「グヒヤサマージャ」生起・究竟二次第の概要を学ぶこともできます。幸いゴムチェン・ガワン・タクパ師による註釈が手許にあるので、それを参照しながら丁寧に解説してゆきたいと思います。
このコースは、3月末までです。4月下旬からは、「六座グルヨーガ」の儀軌講読を考えています。

2月15日(水) 今週の土曜は名古屋教室

今週の土曜18日は、久しぶりに名古屋教室を担当させていただきます。
午後1時から「チベット仏教入門」、3時15分から「金剛薩埵の浄化法」です。
前回は11月だったので、だいぶ間があいてしまいましたが、復習も交えながら丁寧に講義を進めてゆければと思います。
前にも言いましたけれど、一回ごとに「何か得るものがあった」と実感できるようにしたいですね。

2月13日(月) 修習次第コースの写真資料

シネー・ペリー

ポタラ・カレッジ東京センターの定期講習で私が担当している「修習次第」コース【通信受講併用】の写真資料を、アルバムにアップしました。

今回紹介したのは、「シネー・ペリー ཞི་གནས་དཔེ་རིས་」という絵です。止観の止、つまり精神集中の禅定を修習する際の、九段階の心の在り方を象徴的に表現したものです。
ここをクリックすると、別ウィンドウで開きます。アルバムが開いたら、写真をクリックして拡大表示できます。
全体の写真のキャプションでは、描かれた動物等の象徴する意味を紹介しています。各部分の写真のキャプションでは、それぞれの段階について簡単に説明しています。

これはフェースブックのアルバムですが、アカウント登録していなくても、誰でも見ることができます。コース受講者以外の方も、遠慮なく御覧ください。

2月 6日(月) 特別講習「六加行法」

ラムリムの集会図;『チベット密教 瞑想入門』より

今週の土曜2月11日・祝)には、ポタラ・カレッジ東京センターで特別講習「六加行法」があります。時間は午前11時~午後5時。担当はガワン・ウースン先生です。
「六加行法」とは、本格的な仏道修行の前段として実践すべき内容を、①道場の浄化と尊像の安置、②清浄なる供養、③正しい座法と帰依・発心、④集会図の観想、⑤七支分(礼拝・供養・懺悔・随喜・勧請・祈願・廻向)と曼荼羅供養、⑥至心な祈願という六つのポイントにまとめた要訣です。
今回の特別講習では、「六加行法」の教えと実践法について、初心者にも分かりやすく丁寧に説明します。
今からでも受講申し込み可能です(TEL/FAX.03-351-4090、またはinfo@potala.jpへ)。詳しくは、こちらを御覧ください。
写真は、「六加行法」の修行で瞑想する「ラムリム」の集会図。中心には、根本ラマをお釈迦様の姿で観想します。
※ なお当日は、祝日のため定期講習は全て休講となります。

1月31日(火) お陰様で無事終了

朝日カルチャーセンター新宿教室の「チベット仏教と瞑想」、私の​担当する講義は、昨日無事終了致しました。15名ほどの方々が熱​心に受講してくださり、大変有り難いことです。
1時間半でチベット仏教の概要をまとめるのは結構難しいけれ​ど、「ラムリム」の枠組みを中心にお話しさせていただきました。
2月13日と3月12日は、クンチョック先生による瞑想指導が行​なわれます。
この講座、4月~6月にも実施する方向で調整中です。

1月25日(水) DVDブック『ダライ・ラマ法話』

クンチョック先生の新しい共訳書が、春秋社から出版されました。
2010年夏にラダックで行なわれたダライ・ラマ十四世法王猊下​の講伝の記録映像と、その内容の和訳テキストがセットになった、DVDブックです。テーマは、ダ​ライ・ラマ七世法王の『中観の四念住』。ラマ、慈悲、本尊、空と​いう四つの側面からの瞑想を説いたテキストです。
法王猊下の講伝は、中観や密教のかなり本格的な教えに踏み込んだ​内容となっています。DVDがあるので、チベット語の勉強にも役​だつと思います。
詳しくは、出版元春秋社のサイトで。

1月21日(土) 今年最初の大阪教室

明日22日(日)には、今年最初のポタラ・カレッジ大阪教室があります。担当は、クンチョック・シタル先生です。
東京センターでは、ガワン・ウースン先生を導師に、午後6時45分から定例法要を厳修します。どなたでも自由に参加できます。

1月18日(水) 仏智の面で体験される世界

またブログの更新をだいぶサボってしまいましたが、4日の記事「教えに裏づけられた想像力」の続きです。
聖者の菩薩や仏陀の智慧の面で体験される世界を、正しい教えに基づいて想像できなければいけないという話でしたね。

特に、究極の覚りの境地である仏陀に関しては、次のような諸点を論理的に言うことができます。
まず、仏陀は煩悩障と所知障を完全に浄化しきっているため、その智慧の面に顕現する世界は完全に清浄であり、その智慧の面での体験は全て究極の大楽となります。なぜなら、苦の体験や不浄な顕現は、煩悩障と所知障によってもたらされるからです。因が断滅され尽くしている以上、果の生じる余地はあり得ません。
次に、仏陀は一切智ですから、全宇宙の森羅万象を余すところなく全て御存じです。つまり、「仏陀の智慧によって知られる対象」と一切法(あらゆる存在)は、範囲が完全に一致します。
そして、仏陀の智慧が対象を知る方式は、全て現量(直観認識)ばかりです。つまり、十方三世のあらゆる存在と現象を、仏陀は直観的に御覧になって体験なさっていることになります。
以上の諸点を全部併せて考えれば、私たちにとって汚れた苦しみの世界である輪廻の器世間と有情そのものを、仏陀は清浄な顕現として御覧になり、大楽として体験なさっているということになります。

教理の考察」シリーズの「曼荼羅とは何か」のページで、曼荼羅を「仏陀の智慧の面から御覧になった世界」と言っているのも、そういう意味からです。
また「密教と本覚思想」のページで述べている1~3も、このことを指しています。
ですからこれは、私たちが大乗の修行を通じて自己の心を向上させ、煩悩障と所知障を完全に断滅したとき、初めて体験し得る境界です。
それは生易しい道ではないけれど、理論的に決して不可能ではありません。なぜなら、お釈迦様も最初から仏陀だったわけでなく、もともとは凡夫の衆生だったからです。

「本来清浄」という意味を、上記のようではなく、「私たちも、もともとは仏陀だった」というふうに解釈するのは、完全に間違っています。
過去に於て仏陀だったのに、再び煩悩が発生して苦しみを体験するなどということは、全くあり得ません。もしそのようであれば、修行に努力してもいずれ元の木阿弥になるわけで、三学も六波羅蜜も全て無意味になってしまいます。
仏教用語の「滅」や「涅槃」や「客塵清浄」という意味の特色は、断じられた煩悩などが決して再び発生しない点にあります。それゆえこれは、修行によってしか実現できないものだけれど、それ自体は無為法(因や縁によらない存在)と位置づけられます。このあたりは、非常に難解な部分です。

1月10日(火) 二次第と五道の対応

昨日の新春講演「密教の修道論」には、熱心な方々が大勢参加してくださり、とてもよかったと思います。受講者の皆様、お疲れさまでした! これも一つの契機として、ともに顕密の大乗仏教を学修してゆきましょう。

さて、講義の中では時間がなくて出典について言及できなかったので、一部を紹介したいと思います。
所作タントラの修習内容の説明は、レジュメにも記載したように、宗祖ツォンカパ大師の『真言道次第広論』第二品に準拠していますが、もともとの典拠は『後禅定品広説』(ブッダグヒヤ造、Toh.2670)です。
無上瑜伽タントラ生起次第の箇所で触れた「初心行者」等の段階設定は、『真言道次第広論』第十二品前半に詳しい説明があります。もともとの典拠は、「グヒヤサマージャ」ジュニャーナパーダ流の曼荼羅儀軌『四百五十頌』(ディーパンカラバドラ造、Toh.1865)です。
生起・究竟二次第と大乗の五道との対応関係については、幾つかのテキストで触れていますが、例えばパンチェン・スーナム・タクパ大師の『グヒヤサマージャ究竟次第解説・智慧者の魅惑』に明確な説明があります。これは、ギュトゥー寺の公式教科書となっています。該当部分の和訳は、次のとおりです。

〔顕密〕共通の道から、修習の力で風を中央脉管へ入れて溶け込んだことより四空を実際に引き起こせない間は、資糧道〔である〕。それができてから、第三次第(『五次第』の数え方)の幻身までが、加行道〔である〕。義の光明から、双運を得ていない間は、見道〔すなわち〕歓喜地〔である〕。有学双運から、無学双運を得ていない間は、修道〔である〕。それも、各々に対応する所断となっている所知障の正対治をなす面から、九〔段階〕の修道がある。

1月 7日(土) アクセス数5万件

本サイトのトップページに設置してあるアクセスカウンターが、累計5万件を計上しました。サイト開設から2年以内に実現でき、大変有り難いことです。
御覧になってくださる方々へ、心から感謝致します。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
私の自己満足に陥ることなく、できるだけ皆様のお役にたつようなコンテンツを掲載できるよう、初心を顧みつつ努力したいと思います。

1月 4日(水) 教えに裏づけられた想像力

昨日の新年法要は、モンゴルの方々も含めて大勢参加してい​ただき、とてもよかったと思います。
今年も、仏教の勉強と実践に、ともに精進してゆきましょう​!

さて、元旦の記事に関連する話題ですが、今日は純粋に仏教の内容です。

「心の在り方によって、認識される世界が変わってくる」というのは、すごく重要なことです。
この点を本当に分かっていないと、中観思想や密教は、決して正しく理解できません。換言すれば、高い境地の聖者たちの智慧によって体験される世界がどのようなものかを、経典や論書の教えなどから想像できなければいけないということです。
もちろん、私のごとき凡夫が、現時点で聖者のような高い境地を実際に体験することはできません。ですが、教えをよく学んで考察し、その内容に沿って想像することは可能です。正しい教えに裏づけられた想像力が欠如していると、経典の言葉は、矛盾だらけで意味不明になってしまう場合もあります。

例えば、『般若心経』の「無眼耳鼻舌身意」という経文は、空性を直観的に覚った菩薩の深い瞑想状態の智慧によって体験される世界を表現したものです。また、「色即是空、空即是色」という在り方を本当に直観的に体験できるのは、煩悩障と所知障を断滅し尽くした仏陀だけです。

このように、凡夫から仏陀へ至るまで、様々な段階の心によって認識される世界がどのようなものかを知るのは、甚だ重要なことです。これは、信頼できる論書などを根拠にして学ぶべきですが、簡単には「教理の考察」シリーズの「お化け屋敷の喩え」にまとめてありますから、参照してみてください。

1月18日の記事「仏智の面で体験される世界」へ続く

1月 2日(月) 初詣と新年法要

明日1月3日(火)の午後2時から5時まで、ポタラ・カレッジ東京センターで初詣ができます。
午後3時から4時には、クンチョック・シタル師を導師として、新年法要を厳修します。
どなたでも、自由に御参加いただけます。是非いらっしゃってください(予約不要)。
詳しくは、こちらを。

2012年1月1日(日) 謹賀新年

今年も、「チベット仏教ゲルク派 宗学研究室」を、どうかよろしくお願い致します。
皆様お一人お一人にとって、新しい年が幸せで善い一年となりますように!

災いの重なった去年の流れから、いまだかつてない不安感を伴いつつ新年を迎えている方も多いかもしれません。気持ちはよく分かりますが、あまり心配ばかりしていても、自分自身が苦しんでしまうだけです。

ダライ・ラマ法王猊下は、去年11月にインドで開催された国際仏教徒会議2011の閉会式で、「本当により良い世界、幸せな世界をつくりたいと思うなら、それは究極的に“心”次第です」と述べておられます。法王猊下がいつもおっしゃっている内容ですが、仏教の深い見解に根ざしたお考えであり、決して薄っぺらな精神論ではありません。

例えば、同じ液体でも、天にとっては甘露、人間にとっては水、地獄の衆生にとっては血として認識されるといいます。これは、唯識派の見解の根拠としてよく用いられますが、中観帰謬論証派でも同様です。
認識される対象には「それをそれたらしめている本質的な要素」がそれ自体の側にあるわけではないので、認識される対象の単なる属性と認識する心の在り方とが相俟って、はじめて「これは水だ」などという分別が生じるわけです(詳しくは、「蟻の瓶と象の瓶」のページ参照)。
この例は天や地獄という極端なケースですけれど、人間の世界の範囲内であっても、一人ひとりの心の在り方に応じて、同一の事象に対する感じ方は様々です。だからまず、私たちは自らの心を訓練し、向上させてゆくことが大切なのです。

仏教にはその具体的方法が豊富に揃っていますけれど、より一般的な言い方をすれば、貪欲や怒りといったネガティブな心を抑制し、「少なくとも他者を害さず、できれば他者を助けたい」という思いやりの心を育むことです。これを単なる綺麗事で終わらせないためには、現実の生活と結びつける知恵も必要でしょう。
それらを通じて、あくまで自分自身にとっては、苦しみが減少し、幸せが増大します。
次に、そのような一人ひとりの心の向上の輪が広がってゆくことにより、社会が平和で調和のとれた在り方になるはずです。それが実現できれば、人口増を前提とした右肩上がりの経済成長に依存しなくても、人々は安定的に幸せを実感し得るのではないかと思います。もちろんそのためには、科学技術や経済活動の面でも、様々な英知が求められるでしょうけれど・・。

これからの日本は、大きな流れとしては、そういう方向へ進まざるを得ないのではないでしょうか。
そのベースとして私が心強く感じているのは、長年に渡って継続してきた社会の精神的劣化傾向に、最近歯止めがかかっていると見受けられる点です。もう少し観察が必要かもしれませんが、たぶんこの面では「既に大底を打っている」と判断してよいのではないかと思います。だとすればこれは、あらゆる社会現象の先行指標になるはずです。

2011年12月31日(土) 2011年を振り返って

激動の2011年もあっという間に過ぎ去り、大晦日を迎えました。
今年は、震災の関連もあってダライ・ラマ法王猊下が二度も来日なさってくださるなど、多くの皆様にとって印象深い出来事がいろいろあったと思います。

私個人にとっては、根本ラマである大阿闍梨チャンパ・リンポチェ師の御示寂が、他の何事にも比べられぬほど大きな衝撃でした。
もちろんこれは、前もってある程度の覚悟があったわけですけれど、私のような未熟な弟子の心というのは、そんな理屈どおりにゆくものではありません。震災から約十日ほど後、リンポチェ御示寂の報に接したとき、自分の意識の中から震災のことが完全に消え去ってしまうほど、そのショックは圧倒的なものでした。
そして正直に言うと、この巨大な喪失感から完全に立ち直ったとは言い難い状況が、延々と今なお続いています。最近ようやく、理屈ではなく本心から、入涅槃を尊い無常の教えとして受け取れるようになってきたところです。こんな状況ではリンポチェに対しても恥ずかしいので、せめて一周忌までには心の整理をきちんとつけたいと思います。

それ以外では、デプン寺ロセルリン僧院長のトクデン・リンポチェ猊下をポタラ・カレッジでお招きし、「グヒヤサマージャ」をはじめとする密教伝授をなさっていただいたことも、今年の重要な出来事です(こちらを参照)。トクデン・リンポチェの広大な御恩と、会員・受法者の皆様の御協力のお蔭で、とても有意義な密教伝授の機会となりました。
御存じのとおり、この行事は、震災のせいで4月から7月へ延期になったものです。それゆえ、ポタラ・カレッジにとっては、「震災克服」の象徴ともいえるでしょう。

あとは、会長のゲシェー・ソナム師が三年間の親近行に入り、10月から副会長クンチョック師以下三名のスリム化した態勢でポタラ・カレッジの活動を行なっている点も、今年の大きな変化です。
これは、会員・受講者の皆様のお蔭で、今のところ何とか順調に継続できています。来年も、是非よろしくお願い致します。

さて、28日の記事で書いたゲンパ・グゾムですが、この大凶日明けの24時間は、逆に大変縁起が良いともいいます。そうすると、除夜の鐘や初日の出の頃には、吉兆が強くなっているはずです。
災いの多かった2011年の悪い要素が年内で清算される・・・とポジティブに考えれば、これもなかなか素敵な巡り合わせかもしれませんね。

今年も、このサイトを御覧くださって、本当に有り難うございます。
充実したコンテンツをアップしてゆけるよう、来年も一層努力したいと思います。
それでは、善いお年をお迎えください。

12月28日(水) 今年のゲンパ・グゾムは30日と31日

ポタラ・カレッジの定期講習も年内は25日で終了し、本日は、東京センターのすす払い(大掃除)を行ないました。御奉仕くださった会員の皆様、有難うございます。

さて、チベット暦で年間最大の凶日とされる「ゲンパ・グゾム」が、今年は新暦の12月30日正午から31日正午までとなっています昨年12月11日のブログ参照)。
大抵これは年末年始の時期に重なって厄介なのですが、30日の夜は、用心するにこしたことありません。特に、様々な善い仕事や企画、仏教の継続的な修行などを、上記24時間中に開始しない方がよいといいます。
追記:ダラムサラのチベット医学・暦法研究所の暦本によると、今年のゲンパ・グゾムngan pa dgu 'dzomsの時間帯をより厳密に計算した場合、30日17時~31日19時になるとのことです。

12月21日(水) 年末講演「ドゥータ入門Ⅳ」

昨日の「ガンデン・ガチュー」法要は、年末の忙しい時期にもかかわらず、大勢の方々が参加なさってくださり、本当によかったと思います。皆様の積まれた功徳に、心より随喜します。

さて、今週の金曜12月23日・祝)には、ポタラ・カレッジ東京センターで年末講演「ドゥータ入門Ⅳ」があります。担当は、ガワン先生です。今回のテーマは、認識の対象と主体。瞑想の実践にも関係する、なかなか興味深い分野だと思います。詳しくは、こちらを御覧ください。今からでも、受講申し込み可能です(TEL./FAX.03-3251-4090、またはinfo@potala.jpへ)。

12月17日(土) ツォンカパ大師御縁日法要

来週の火曜12月20日)は、チベット暦で10月25日。宗祖ツォンカパ大師の御縁日で、「ガンデン・ガチュー」といいいます。チベット仏教圏では、ガンデン・ガチューの夜、家々の仏壇や窓辺に灯明を点し、幻想的な雰囲気の中で祈りの時間を過ごします。
ポタラ・カレッジ東京センターでも、当日の夜7時45分から9時15分頃まで、クンチョック先生を導師に法要を厳修します。どなたでも自由に御参加いただけますから、是非いらしてください(予約不要)。詳しくは、こちらを。

12月15日(木) 新春講演「密教の修道論」

ポタラ・カレッジ会員の皆様へは既に御案内していますが、年明けの新春講演、今回は私が担当させていただくことになりました。テーマは「密教の修道論」。1月9日(月・祝)午前11時~午後5時に、東京センターで行ないます。
大乗仏教に共通する五道・十地の修道論を概観し、それと密教との関連を考察する予定です。具体的には、菩提心を発して菩薩行へ入ってから、止観の修習を通じて空性を直観的に覚る智慧を獲得し、その智慧によって煩悩障と所知障を断滅して仏陀の境地へ至る・・・という大乗共通のプロセスに、密教の修行の段階を合わせて対照します。密教に関しては、瑜伽タントラ以下の有相瑜伽・無相瑜伽、及び無上瑜伽タントラの生起次第・究竟次第という、二つのレベルの枠組みで整理します。無上瑜伽タントラは、主に「グヒヤサマージャ」聖者流の「五次第」に準拠する予定です。
密教の教相の難しい内容ですが、初心者の方々にも分かるように、できるだけ平易な説明を心がけたいと思います。灌頂を受けて修行する成就法の内容が、大乗仏教に共通する修道論の大きな枠組みの中でどう位置づけられるか・・・という点を明確にしたいと考えています。
詳しくは、こちらを御参照ください。

12月 6日(火) 密教と本覚思想

12月もいつの間にか、五日間が過ぎ去ってしまいました。あまりにも早くて、なんだか薄気味悪いくらいです(笑)。

さて、「教理の考察」シリーズに、「密教と本覚思想」をア​ップしました。これは、前の記事で紹介した「曼荼羅とは何か​」の続編として、新たに書きおろしたものです。
チベット仏教と関わる近代仏教学の世界では、とかく悪者にされが​ちな(笑)本覚思想ですけれど、密教の立場から見るならば、「本​覚」ということ自体は別に間違っていないと思います。ただ、本覚​思想に付随してしばしば語られる修道不要論は、完全に間違いです。そのあたりを、基・道・果の枠組みに沿って少し整理してみたの​で、興味のある方は是非御覧ください。

11月29日(火) 曼荼羅とは何か

久しぶりに、「教理の考察」シリーズのコンテンツを追加しました。今回は密教の教相に関する内容で、曼荼羅の本当の意味を探求しています。題して「曼荼羅とは何か」。
実はこの文章、2010年6月27日から7月7日にかけて、ブログに書いたものです。ただ、過去の記事はなかなか目につかないし、他の話題もはさんで小分けになっているから読みにくいので、「教理の考察」の一環として再掲載しました。中身の理解に役だつ画像2枚を新たに貼り付けたので、以前にブログでお読みいただいた方も、是非御覧になってみてください。

世間一般に流布している曼荼羅の説明の幾つかは、主尊(大日如来や持金剛仏など)の位置づけが、まるで「宇宙の創造主」みたいになっています。「初めに絶対者ありき」で、それと自己との合一を目指してゆくような考え方です。
しかしそういう発想では、仏教の大原則である「創造主や絶対者の否定」と完全に矛盾してしまいますから、密教の正しい修行には決してなりません。
今回の考察が、そのような点も含め、密教実践の裏づけとなる理論への認識を深める手助けになれば・・・と思います。

11月27日(日) 朝日カルチャーで講義します

来年の話ですが、朝日カルチャーセンター新宿教室で、「チベット仏教と瞑想」という短期講座を、クンチョック先生と私で担当します。
1月30日(月)、2月13日(月)、3月12日(月)の三回、いずれも午後7時~8時30分です。
初回(1月30日)に私がチベット仏教の概要を説明し、後の二回はクンチョック先生が瞑想を実践指導します。
詳しくは、こちらを御覧ください。

11月24日(木) カーラチャクラと三大本尊

昨日の特別講演「カーラチャクラの概要」は、多くの方々が参加してくださり、とてもよかったと思います。クンチョック先生は、カーラチャクラに造詣が深いし、それを解説する経験も豊富だから、昨日の講演もよくまとまっていて分かりやすかったと思います(私は一部しか聞いていませんませんが・・)。
久しぶりにカーラチャクラの話に接し、個人的に改めて感じたのは、自分があまりカーラチャクラ向きではないという点です。密教の様々な行法には、各自で向き不向きがあります。だからこそ、仏陀は多種多様な教えをお説きになったわけです。
たとえ自分に向いていないと思われる教えでも、それを尊重しなければいけないのは当然です。でも、本格的に修行を実践する際には、できるだけ自分に合った行法を選んだほうが効果的だと思います。
私自身に関していえば、やはりグヒヤサマージャ、ヤマーンタカ、チャクラサンヴァラという三大本尊が、一番馴染みやすいようです。「三つもなんて、欲張りすぎ」と言われてしまいそうですが(笑)、この三者は宗祖ツォンカパ大師によって整合性ある行法体系にまとめられています。その全体よりも、カーラチャクラのほうが、たぶん複雑で膨大な体系ではないかと思います(天文暦法まで包括しているぐらいですから・・)。
いずれにせよ、本当に自分に合った行法を見つけるためには、まず巾広く教えを聞いて学ぶことが大切です。

11月20日(日) 無事終了しました

昨日の名古屋教室、お蔭様で無事終了いたしまし​た。
悪天候にもかかわらず、熱心な受講者の方々が大勢集まってくださいま​した。中京圏だけでなく、京都や大阪、さらに横浜からもいらっしゃ​っていただき、本当にありがたいことです。
皆様の御期待に応えられたか、あまり自信はありませんけれど、少しで​も何か得るところがあったらいいなと思います。
次回の私の担当は、だいぶ先になってしまいますが、来年2月18​日(土)を予定しています。

11月15日(火) 名古屋教室担当します

ブログの更新、だいぶサボってしまいました(汗)。
11月も、今日で半分終わりなんですよね。月日の経過が、あまりにも早すぎます。先週は、個人的にいろいろ大変だったので、余計そう感じてしまうのかもしれませんが・・。だけど、これから来週にかけても、また忙しそうです(苦笑)。

さて、今度の土曜19日は、ポタラ・カレッジ名古屋教室で講義をさせていただきます。
午後1時から「チベット仏教入門」、3時15分から「金剛薩埵の浄化法」です。
名古屋教室を担当するのは、初めてです。回数が多くないので、一回ごとに「何か得るものがあった」と実感する授業にしたいですね。出来るかな?
とにかく、分かりやすい説明を心がけたいと思います。受講者の皆様、よろしくお願いします!

11月 2日(水) 金剛頂経と日本密教、チベット密教

昨日と今日、ダライ・ラマ法王猊下による「金剛界大灌頂」が、高野山で厳修されました。フェースブックなどで、参加された方々からの御報告や写真にいち早く接することができるのは、一昔前では考えられない話ですよね。とにかく、灌頂受者の皆様が積まれた功徳に、心から随喜します。
そこでこの機会に、以前フェースブック上で公開した短い論考「『金剛頂経』を中心とした日本とチベットの密教の関係」を、ここに再掲したいと思います。

日本とチベットの密教の関係を考えるとき、『大日経』や『初会金剛頂経』、或は『蘇悉地経』など双方に共通する聖典があり、それらをもとに実修される行法にも共通する要素が数多くある点は、当然のこととしてよく認識しなければいけません。そのうえで、「双方のどこが共通で、どこが異なるのか」を、筋道立てて整理する必要があると思います。
『大日経』などの共通の土台のうえに、日本の密教(東密)は両部不二の体系を確立し、チベットの密教(サルマ系)は無上瑜伽を加えた四部タントラの体系を確立しています。
チベットに関して興味深いのは、「四部タントラを大きく二つに分けるとしたら、どこで区切るか?」という点です。主に二種類の区切り方を設定できますが、一方が正しく他方が間違っているという話ではありません。どのような視点から見るかで、区切り方も異なってくるという意味です。
一つは、所作・行・瑜伽の三者と無上瑜伽との間で区切る考え方です。無上瑜伽は、他の三者に無い特色を数多く有するから、この区切り方は理解しやすいでしょう。その場合、無上瑜伽には日本密教と共通する要素が少なく、他の三者には多い・・・というふうに、一応大雑把に整理できます。
もう一つは、所作・行の二者と瑜伽・無上瑜伽の二者との間で区切る考え方です。これは、三昧耶戒や微細瑜伽の説明などでよく用いられますが、いろいろ示唆に富んだ奥深い面があるかもしれません。
以前リゾン・リンポチェ猊下(現ガンデン座主)と日本の密教についてお話ししたとき、「『真実摂経』(初会金剛頂経)は、瑜伽タントラと無上瑜伽タントラの両者に共通する根本タントラだ」とおっしゃっていました。このお言葉はまさに、第二の区切り方に基づいた考え方だと言えます。これを日本密教の側から見ると、『十八会指帰』で説かれる広義の「金剛頂経」の体系にほかなりません。
リゾン・リンポチェがそのようにおっしゃっているのは、四大品と続タントラが揃っているチベット訳『真実摂経』を念頭に置いてのことです。金剛界品の一部しか収録されていない「三巻本教王経」の内容だけで、そのように位置づけるのは、少し無理があると思います。
弘法大師の時代に、漢訳の『初会金剛頂経』のテキストは、「三巻本」しかなかったはずです。しかし弘法大師御自身は、より巾広い内容を御存じだった可能性が大きいといいます。そうだとすると、弘法大師は「両部不二」をお説きになる一方で、『十八会指帰』を通じて広義の「金剛頂経」の世界を“現実的な可能性”として見据えていらっしゃったのではないでしょうか・・。
このように考えると、現代の私たちがチベット密教の伝統に従い、『秘密集会』(広義の「金剛頂経」第十五会)などの無上瑜伽タントラを日本の地で学修することも、その延長線上にあるのだと言えるでしょう。

10月30日(日) カーラチャクラの特別講演

ダライ・ラマ法王猊下が来日されましたね。
今回は、日本密教の聖地である高野山で「金剛界大灌頂」を厳修なさり、また東日本大震災の被災地を御訪問されるなど、大変意義深い内容だと思います。多くの方々にとって善き御縁となるよう、蔭ながらお祈り致します。

さて、ダライ・ラマ法王といえば、今度のお正月にインドのブッダガヤで「カーラチャクラ大灌頂」があります。
それにちなんで、ポタラ・カレッジでは、11月23日(水・祝)に特別講演「カーラチャクラの概要」を実施します。担当は、カーラチャクラに詳しいクンチョック・シタル師です。
ブッダガヤの大灌頂に参加される方も、そうでない方も、「カーラチャクラ」について認識を深めるよい機会になると思います。

10月25日(火) 受講者の皆様に感謝!

先週からポタラ・カレッジ東京センターの定期講習が始まり、私の担当する3コースも、無事に初回の授業を行なうことができました。いずれも熱心な受講者の方々が集まってくださり、とても身の引き締まる思いです。分かりやすく楽しい講習となるよう、心がけてゆきたいと思います。参加者の皆様のお蔭で私自身の勉強になることも多く、本当に有り難いことです。

10月19日(水) 秋からの定期講習スタート

明日から、ポタラ・カレッジ東京センターの定期講習が始まります。
ゲシェー・ソナム師不在の影響は大きいですが、クンチョック師以下三名で頑張ってゆきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします!

10月15日(土) ラムリムのコース、通信受講もできます

秋からの定期講習で、新コース「ラムリム」(ガワン・ウースン師担当)を通信受講併用方式で開講するのは、とても画期的なことです。
「ラムリム」は、仏教全体の教理・実践体系の集大成であり、顕密に共通する道を学修する最も効果的な教えです。

それゆえ、例えばポタラ・カレッジで密教の本格的な灌頂を実施する場合、「ラムリムの学修」が最低限の受法資格となります。これは、私たちが勝手に決めていることではありません。灌頂をお授けになるラマへ事前にお伺いすると、大抵は「無上瑜伽タントラの大灌頂を受ける人は、少なくともラムリムなどで、顕密共通の道を学修していなければいけません」とお答えになります。
それで具体的に灌頂の日程が決まって会員の方々へ御案内する段になったら、ラマのお言葉どおりに注意書きし、受法申し込みの際にもその点をチェックしています。
そうすると、遠方にお住まいの方やお忙しい方から、必ずといっていいほど「ラムリムのコースに通いたくても通えないのだが、どうしたらいいのか?」というお話を伺います。ごもっともな事情ですけれど、だからといって、顕密共通の道を全然学修せずに無上瑜伽タントラの大灌頂を受法してよいことにはなりません。
なので私たちも、「定期講習が無理でも、例えば集中講座などでラムリムがテーマとなることもありますから、何らかの機会をみつけて学修してください」とお答えするしかありませんでした。

しかし今回は、「ラムリム」の定期講習が通信受講併用方式で始まるわけですから、より本格的に学修できる機会となります。
今まで灌頂の御案内があるたびに、「ラムリムのコースに通いたくても通えない」と思っていらっしゃった方は、是非今回のチャンスを活用してください!

10月14日(金) 定期講習の情報、公式サイトにも掲載

秋からの定期講習について、ポタラ・カレッジ公式サイトに、詳しい情報が出ています。こちらを御覧ください。

10月12日(水) 有相瑜伽と無相瑜伽

9日の記事「止観は顕密共通の瞑想」で、密教については無上瑜伽タントラを例にお話ししましたが、所作・行・瑜伽タントラではどうなるでしょうか?
最もベーシックな密教である所作タントラの場合、『後禅定品』という聖典に、止観の行法が説かれています。まず先に、「止観ではない本尊瑜伽」として、六本尊や四支念誦の修行が必要です。それらを円満してから、本尊瑜伽を維持した状態で、火に安住する禅定、声に安住する禅定、声の辺際の禅定を順に修習します。前の二つが止の修行で、三つめが観の修行になります。もちろん最終的には、止観不離を実現しなければなりません。これらは、「本尊瑜伽を維持して・・」という点に特色があり、止の対象が真言の音だという点も特徴的です。しかし、内容の本質面から見ると、『修習次第』に説かれている顕密共通の止観と、それほど大差はありません。つまり、顕密共通の止観のうえに付加する独特の要素は、僅かしかないということです。

行タントラや瑜伽タントラの場合、有相瑜伽・無相瑜伽という用語が用いられます。これは、無上瑜伽タントラの生起次第・究竟次第に対応する位置づけですが、内容的に見れば、前述の所作タントラの枠組みに近いものです。有相瑜伽には、「止観ではない本尊瑜伽」と止の修行のプロセスが含まれます。無相瑜伽は、観の修行と止観不離のプロセスです。
瑜伽タントラでは、止の手段として微細瑜伽を実践します。無上瑜伽タントラの微細瑜伽と全く同じわけではありませんが、共通する要素もかなり見られます。無相瑜伽に関しては、『修習次第』に説かれている顕密共通の観と、やはりそれほど大差がありません。

宗祖ツォンカパ大師は、『ガクリム・チェンモ』第二品で、声の辺際の禅定(無相瑜伽に相当)を説くにあたり、次のようにおっしゃっています。「輪廻の根本たる我執を絶つ道も未だ得ていないので、声に安住する〔禅定〕も捨離して、声の辺際に解脱をもたらす禅定〔すなわち〕空性を修習するべきだ」と。この指摘は、非常に重要な教誡です。六本尊による我生起からここまでの行法(有相瑜伽に相当)だけでは、空性の現量了解も得られないし、それが得られない限り煩悩障と所知障を種子から断じることもできないので、解脱も成仏も不可能だ・・・という点を明言なさっているからです。
所作・行・瑜伽タントラの枠組みでは、「空性の現量了解を得て二障を種子から断じる」という加行道以上のプロセスは、声の辺際の禅定や無相瑜伽によって修行することなります。それらの行法内容が、本質面で顕密共通の観とあまり大差ない・・・という点を、無上瑜伽タントラ究竟次第(共通の観のうえに付加する独特の要素が豊富にある)との対比から認識することは大変重要です。

10月10日(月) 牟尼三三昧耶荘厳の成就法

8月5日のブログで宣言(笑)したとおり、やっと「牟尼三三昧耶荘厳」成就法の和訳を作りました。「2011年夏の密教伝授」のページで、「牟尼三三昧耶荘厳」の箇所に入口があります。受者限定を守ってくださるように、よろしくお願いします。

10月 9日(日) 止観は顕密共通の瞑想

10月下旬からの新規開講コースで私が担当する「修習次第」は、止観がテーマです。簡単にいえば、「止」は心を一点集中させる瞑想、「観」は対象を観察する瞑想です。
この両者をどのように実践してゆくかを、顕教と密教の両面から考えてみましょう。

A.
仏道修行の第一段階である資糧道では、止と観を別個に修習します。まず止の修行を成就して、空性を対象とする観に入り、その最初の成果が出た瞬間から、第二段階である加行道へ移行します。
加行道では、止と観を分かち難く結びつけて修習し、分別の介在を次第に排除してゆき、空性の直観了解を目指します。

「こうした止観の瞑想は、顕教の実践内容であり、密教ではその代わりに本尊瑜伽を修行する」などと語られることがありますが、それはあまり正しくありません。

B.
無上瑜伽タントラの場合、生起次第が資糧道、究竟次第の前半が加行道に相当します。
生起次第では、まず「止観ではない本尊瑜伽」を修習します。例えば、我生起や供養や真言念誦などです。それらが堅固になったら、本尊瑜伽を維持しつつ、微細瑜伽によって止を修習します。そのうえで、風を中央脉管の中へ流入させてゆくと、楽空の智慧を体験します。これが、空性を対象とする観の最初の成果です。それを得た瞬間から、究竟次第へ移行します。
究竟次第では、チャクラ、脉管、風、滴などに心を集中しつつ楽空の智慧を深めてゆく形で、止と観を分かち難く結びつけて修習します。風を胸のチャクラの中央脉管内へ収束させることで、分別の働きを次第に溶け込ませてゆき、空性の直観了解たる光明を目指します。

このように、本尊瑜伽を維持しつつ生起次第と究竟次第で止観を修習するのが、無上瑜伽タントラの中心的な実践です。その止観の根本的な枠組みは、『修習次第』などによって習得する必要があります。この点は、上記のA(『修習次第』の枠組み)とB(無上瑜伽タントラの枠組み)が完全に相応していることからも、よく理解できると思います。

つまり、『修習次第』に説かれている止観の理論は、顕教・密教に共通するものであり、密教ではそのうえに独特の要素を付け加えている・・・と考えるのが正しいわけです。

10月 6日(木) 秋季集中講座「十万頌般若経の要略」

こんどの連休、10月9日(日)と10日(月・祝)に、ポタラ・カレッジ東京センターで秋季集中講座「十万頌般若経の要略」を実施します。ガワン先生の担当です。詳しくは、公式サイトのトップページを御覧ください。今からでも、受講申し込み可能です。info@potala.jpにて承わります。

10月 2日(日) 秋からの定期講習の案内書

昨日、秋からのポタラ・カレッジ定期講習(東京・名古屋・大阪)の案内書・申込書を、会員の皆様へ郵送しました。会員以外の方へも、御請求があればお送りしますので、遠慮なくお声をかけてください。
東京センターの開講日は、昨日も書きましたが、10月20日(木)となります。
10月の名古屋教室は15日(土)、大阪教室は23日(日)です。
資料請求・お問い合わせは、info@potala.jpまでどうぞ。

10月 1日(土) ゲシェー・ソナム師の親近行

今日から10月ですね。
ポタラ・カレッジの定期講習は、春からのコースが昨日で終わりました。
秋からのコースは、10月20日に始まります。こちらを御覧ください。

さて10月からは、ポタラ・カレッジ会長のゲシェー・ソナム・ギャルツェン師が、三年間の親近行(しんごんぎょう)に入ります。実際に修行を開始するのは、もう少し先だそうですが、ポタラ・カレッジでの講義は、親近行の前としては昨日が最後になりました。

親近行bsnyen paとは、特定の本尊の成就法を、一定期間集中的に修行することです。これを満願したら、弟子に灌頂を授けるなど、金剛阿闍梨としての条件を満たすことになります。しかしそれは、より短期間の親近行でも可能です。三年間の大親近行は、ポタラ・カレッジで灌頂を授けてくださった高僧たちでも、実際に修行なさった方は多くありません。
ソナム師は、以前に短期の親近行は実修していますから、今回三年間の大親近行に入るのは、純粋に自己の修練のためです。それによって、僧侶としての位が上がるわけでもありません。名声のためでもありません。「できることなら、誰にも知られずに修行したい」と、前から言っていたほどです。もちろん現実には、そのようなことでは会員・受講者の皆様に御迷惑がかかるので、前もって5月にお知らせした次第です。

そういうわけだから、私がここでソナム師の親近行についてあれこれ語るのは、たとえ尊敬の気持ちからであっても、本人の意図に背く結果になります。なので、これ以上具体的なことは書かないようにします。
ただ、今回の親近行を修行する場所が国内だという点だけは、申し上げておきましょう。多くの方が、「ソナム師は三年間日本に居ない」と思い違いしているからです。かく言う私自身も、話が最初に具体化したときは、「インドで修行するのですか?」と尋ねたほどです。
まあそういうのは、私たちの先入観ですね(笑)。本当は、インドで出来て日本で出来ない理由など、何一つありません。私自身が一年前に南インドで短期の親近行を実修したのは、根本ラマのもとで指導を受けながら行じたかったからです。それで実際に修行してみて、日本でも十分可能だと思いました。
私もいつか、三年間ではありませんが、護摩行まで含めて親近行の全過程を日本国内で実修したいと思っています。

9月24日(土) 今度の定例法要

昨日は、第2会場の片付け作業などを行ないました。御奉仕くださった会員ボランティアの皆様に、心より感謝します。お陰様で、だいぶ整理が進みました。

さて、日曜(9月25日)午後6時45分からの東京センター「定例法要」は、親近行の前にゲシェー・ソナム師が導師を務める最後の機会となります。それでこの日の法要は、ソナム師自身が施主となって厳修します(参加者の皆様からお供物代を集めません)。
どなたでも自由に参加できますから、是非いらっしゃってください。

9月21日(水) 速報・休講のお知らせ

本日夕方の東京センターの定期講習「ヤマーンタカ十三尊成就法」は、台風の被害の心配があるので、念のため休講します。
各地で被害が広がらないよう、お祈りいたします。

9月20日(火) ゲシェー・ソナム師を囲む会

ゲシェー・ソナム師とクンチョック・シタル師

会員の皆様へお知らせしたように、「ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師を囲む会」を、昨夜日比谷で開催しました。会員・受講者を中心に60名ほどの方々が集まり、来月から三年間の親近行に入るソナム師とともに、和やかで楽しいひとときを過ごすことができました。参加してくださった皆様に、心から感謝します。
ゲシェー・ソナム師の親近行は、名誉や地位などの世八法と完全に離れた、純粋に自己の向上を目指すための修行です。それは究極的には、一切衆生のために菩提を求める利他行にほかなりません。
私もその精神を見習い、クンチョック先生やガワン先生、そして会員・受講者の皆様と共に手を携え、仏教の学修に精進してゆきたいと思います。

9月16日(金) 秋の特別講演「普賢行願賛の概要」

明日から世の中は、ダブル三連休ですね。ポタラ・カレッジでは、その間にいろいろ用事があり、普段の週より休暇が少ないことに・・・。ちょっと溜息な十日間になりそうです(笑)。

さてそんな中、9月19日(月・祝)に、秋の特別講演「普賢行願賛の概要」を実施します。講師は、クンチョック・シタル師です。詳しくは、公式サイトのトップページを御覧ください。今からでも、受講申し込み可能です。

あと、「秋からの定期講習」のページに掲載した大阪教室の日程のうち、11月分が13日(日)に変更となりました(当該ページは既に修正済です)。

9月14日(水) 秋からの定期講習のページ

ポタラ・カレッジ秋からの定期講習のページを作りました。東京センター、名古屋教室、大阪教室の全コース、クラスの概要を記載しています。こちらです。
御不明な点などりありましたら、遠慮なくお問い合わせください(TEL.03-3251-4090、info@potala.jp)。

今回初めて、私も名古屋教室の担当になりました。分かりやすい説明を心がけたいと思います。中京圏の皆様、どうかよろしくお願いします!

9月 8日(木) 新コースの追加

前の記事で、東京センターの新コース(通信受講併用)として「ラムリム」と「修習次第」を御紹介しましたが、あと二つ新規開講があります。

一つは、ガワン先生担当の「チベット語文法」(木曜午後2時~3時30分・通信受講併用コース)です。動詞や助詞の用法を中心に、チベット語の文法について詳しく説明します(このコースは、チベット文字が読める方を対象とします)。

もう一つは、クンチョック先生担当の「三昧耶戒の解説」(通信受講専用コース)です。宗祖ツォンカパ大師の「根本罪解説(ツァトゥン・ナムシェー)」に基づき、五部の三昧耶戒と十四根本罪などを詳しく説明します(このコースは、無上瑜伽タントラの灌頂を受けている方のみ受講できます)。

9月 5日(月) 10月からの新コース

ポタラ・カレッジ東京センターの定期講習で、10月下旬からの新規開講コースは、ガワン先生担当の「ラムリム」(火曜午後6時30分~8時)と、私が担当する「修習次第」(金曜午後7時~8時30分)です。この2コースは、通信受講併用方式で実施します。遠方の方、お忙しい方も、通信受講で御参加いただけます。

ラムリム」は、チベット仏教の教理・実践の集大成。灌頂を受けて密教の本格的な修行を実践するためには、顕密共通の道として「ラムリム」の内容をよく学修していることが不可欠です。このコースでは、宗祖ツォンカパ大師の『菩提道次第略論(ラムリム・チュンワ)』を紐解きながら、チベット仏教の基本体系を分かりやすく説明します。

修習次第』は、インドの論師カマラシーラが説いた教えです。瞑想の実修に役だつ内容が豊富で、これをよく学ぶことにより、顕密に共通する止観の実践法を習得できます。宗祖ツォンカパ大師も、止観の解説にあたっては、この『修習次第』をベースにしています。今回のコースでは、クンチョック先生の指導で私自身が和訳したテキストを使い、チベット仏教の瞑想の仕組みを解明してゆきたいと思います。

なお、「前行道場」(日曜午後5時~6時30分)のテーマは、グルヨーガとなります。

これから、大阪教室・名古屋教室の分も含め、情報を順次アップしてゆきます。ときどき、チェックしてみてください。

9月 1日(木) 震災からまもなく半年

今日から9月ですね。
去年の9月1日のブログに「地震に備えを」という記事を書いたのですが、不幸にして、想像を遙かに上回る規模で現実のものとなってしまいました。
阪神大震災のときも、前年(1994年)の夏は猛暑。そして去年の夏は、その記録を塗り替える猛暑でした。猛暑と大地震の関係は、科学的根拠が見出せず、都市伝説のようなものかもしれません。
ただ仏教的には、四大種(地・水・火・風)の調和の乱れという点から説明できます。そういう時期には、一見無関係な自然災害が連続して発生しても、決して不思議ではありません。
いずれにせよ、私たち人間に出来ることは、かなり限られています。巨大地震は二度と起きて欲しくないけれど、現実にどうなるか分からないので、日頃から用心しておくべきでしょう。少なくとも、原発事故のような人災を二度と起こさないように、きちんと対処しなければいけません。
自然災害の心配はあるものの、私は日本の近未来について、かなり明るい見通しを持っています。震災関連以外に、政治・経済の難題が山積していることは、百も承知のうえです。「じゃあ、ただの願望だろう」と思われるかもしれないけれど、そうでもありません。この難局に踏み留まって頑張った人たちの報われるときが、必ず来ると思います。

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